落語の話はどこからでも始まる

定年間近なサラリーマンが落語のことをあれこれ書きます。

『小三治の落語』は小三治入門としても芸談の本としても素晴らしい。

f:id:hagihara3845:20220605194515j:image

 

広瀬和生さん。

個人的にいま、最も信頼している落語評論家です。

 

その広瀬さんの文庫新刊『小三治の落語』が出てると知り合いに教えてもらい読み出したんですが、予想通りとても面白かった。

 

小三治師匠のネタを広瀬さんが分析し、世に出回っているCDやDVDだったらどれを選ぶべきか。そこまで解説してくれてます。小三治入門として素晴らしい。

 

後半4分の1ほどは広瀬さんの小三治師匠へのインタビュー。これが芸談としてとても興味深いです。

 

晩年の師匠は、普通の噺家とはちょっと異なる次元にまで行ってたんだなあ、というのがわかります。

 

シンプルに、「いいなあ」と思えるフレーズもいくつかありまして。

 

「ウケるからまたやる、っていうのは、もう、恥です、みっともない。ウケたら、それはやめて、違う手を考える」

 

志ん朝は、死んじゃいけない。あの人は死んじゃいけない。ずっと生けてなきゃいけない。それは、ファンのためじゃなくて、噺家のために」

 

「評論は、評論のための評論であって、正論ではないですよね」

 

「私、落語よこのままいつまでも、永遠に、なんて思ってないですから。ダメになったらダメになったでいいですよ。ビクビクしても仕方ない。西暦何年頃、落語なんていうものが、とうとうなくなってしまいました、歴史上、何年から何年くらいまででした、ということになっても、それはそれで、結構」

 

最後の発言は、今まさに展開中の末広亭クラファンに対するコメント、と言ってもおかしくない気がするんですよね。

 

あ、そうそう、広瀬さんは1983年の下北沢・本多劇場での「子別れ」を、「落語の歴史に大きな意味を持つものになった」と評されてます。この落語会、聴きに行ってるんですよ、私。(単なる自慢)

 

柳家小三治

#広瀬和生