落語の話はどこからでも始まる

定年間近なサラリーマンが落語のことをあれこれ書きます。

『桂馬の高跳び』のニ代目山陽先生の若旦那ぶりが半端ない

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最近読んだ『桂馬の高跳び』、かなり面白かったです。二代目神田山陽先生の一代記。

 

この方、2000年に亡くなったのですが、私、かろうじて間に合っていて、国立演芸場の舞台を見に行ってます。その時で、80歳は越えていたと思います。

 

二代目山陽といえば今をときめく神田伯山先生の師匠である、神田松鯉先生の師匠。つまり伯山の大師匠です。また、講談界は女性の講談師がかなり多いのですが、それも、山陽先生が女性を弟子にすることに抵抗がなかったからのようです。彼女たちのために「カルメン」「クレオパトラ」などの新作も残しています。

 

というわけで、今の講談界にいろいろな影響を与えている人なんですが、この一代記を読んで驚きました。

 

落語には、若旦那が出てくる噺があります。大きな商家のお坊ちゃんで、親が作った財産を好き勝手に使う。山陽師匠がまさにそんな人なんですよ。

 

夜中、芸者遊びの途中で家に寄り、金庫を開けて札束を掴んで車に戻るという描写が出てきます。他にも、金持ちでなきゃできないでしょ、という道楽を他にもいろいろやってます。

 

そもそも講談との最初の接点も、客として通っていた講談の寄席が潰れないようにスポンサーとなったこと。実家に、よほどお金があったんですねえ。

 

この豪快なお坊ちゃんが、戦後、一気に貧乏になり、講談業界で独自のポジションを得るまでを描いてます。演芸好きにはとても楽しい1冊だと思います。

 

長くなってしまいましたが、最後に、一番驚いたエピソードを書いておきます。

 

講談師となってまだ数年、の話だと思いますが、寄席の親しい女性スタッフに、こんなことを言われます。「近頃よく来る学生が、あんたのことを批評してたわよ。聞いてわかりやすいが、どうも足に乏しいって」


40年後にその学生さんの正体がわかります。若き日の、桂米朝師匠だったそうです。

 

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