落語の話はどこからでも始まる

定年間近なサラリーマンが落語のことをあれこれ書きます。

立川寸志さんの「将軍の賽」が気になって

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先日11月3日の「立川流が好きっ!」

立川談志の孫弟子たち(曾孫弟子と直弟子もいましたが)による楽しい回でした。

特に印象に残ったのが、立川寸志さん。

編集者から落語家になったという経歴がそもそも気になっていたのですが、今年になって配信などを見る機会が増え、知的な感じがするなあと思うように。

 

立川流の人たちはもともと知的な人が多い。

もっといえば落語家という職業を選んでいる時点で、皆さん、知的です。

 

寸志さんの場合は、落語という素材を目いっぱい楽しんでいる感じがして、その楽しみ方が知的で、見ていて楽しいのです。(説明になってますかね…)

 

この日のネタは「将軍の賽(さい)」。

 

初めて聞くネタでした。

落語としてはかなり珍しい構造をしていると思います。

 

何しろ、黒船襲来直後と時代設定がはっきりしていて、阿部正弘井伊直弼といった人物が実名で出てきます。だからといって講談ネタではなさそうです。

 

調べてみたら、三遊亭圓窓師匠が1985年9月の国立名人会でかけてます。

圓窓師匠と言えば、珍しいネタ・古いネタを発掘されていた方ですから、圓窓師匠が見つけてきた演目、なのかもしれません(確証はありません)。

 

さらに調べたら、寸志さんご本人が、2017年3月に日暮里のサニーホールにて、「珍品噺研究会」という会でかけています。やっぱり珍品なのね。


あまり、というかほとんど聴かないネタである理由の一つは、上記の通り、落語らしからぬ噺だからだと思いますが、もうひとつは、サゲがわかりにくい。

「水戸を入れますと、テラ(寺・博打の親)がつぶれます」

というサゲなんですよ。

 

博打におけるテラとは何か、という説明が要るわけですが、寸志さんはそっちの説明をほとんどせず、水戸藩主・徳川斉昭がお寺の鐘を砲台代わりに使ったという故事をストーリーの中できちんと説明することで、「寺が潰れる」というサゲに。

その結果、すんなりと納得できました。

 

こういう珍しい噺を見つけきて、現代の客にわかりやすく語る。

寸志さんは、こういうのもお好きなんでしょうね。

やはり、気になる落語家さんだわ。

 

立川流、気になる落語家が多すぎる!

志の輔談春クラスは別格としてこしら、吉笑、こはる、そして寸志)

(あえて敬称略)